第21回(2005年)受賞者 / 基礎科学部門 / 生物科学(進化・行動・生態・環境)

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サイモン・アッシャー・レヴィン (Simon Asher Levin)

アメリカ / 1941年4月22日
生態学者、プリンストン大学 教授

【空間生態学の確立と生物圏に関する複雑適応系理論の提唱】
地球上の生物圏の実態を統一的に捉えるため、生態プロセスの空間的諸側面を捉える数理的手法を導入し、「空間生態学」という新分野を確立し、生態学に新しい展開をもたらした。さらに、生態系や生物圏を「複雑適応系」として捉え、新たな視点の環境保全管理法を提唱するなど、環境科学に多大な影響を与えた。

プレス資料

1961年ジョンズ・ホプキンス大学卒業、1964年メリーランド大学で数学の博士号取得。1965年からコーネル大学の生態系統学教室で、1992年からはプリンストン大学の生態進化学教室で教鞭をとる。米国科学アカデミー会員であり、生態学のマッカーサー賞(1988年)、数理生物学の大久保賞(2001年)、環境科学のハイネケン賞(2004年)などを受賞

包括的な生物多様性の仕組みの解明により
環境保全にも多大な影響を与えた生態学者

レヴィン教授は数理的手法を用いて複雑な生物圏を包括的に理解する「空間生態学」を切り拓いた。さらに、生物圏を「複雑適応系」として捉える教授の手法は、新たな視点の環境保全管理法を提唱するなど、環境科学にも大きな影響を与えた。

地球が誕生して46億年、生物が誕生して35億年。この長い年月のなかで、生物間の相互作用や環境の変化への対応の結果として、今われわれをとりまく生態系がある。そのなかで生物がどのように活動し、物質やエネルギーがどのように循環しているかを研究するのが生態学である。従来の生態学では、複雑な生物圏を包括的に理解することは難しかったが、レヴィン教授は数理的手法を使ってこの難題に取り組み、生物圏を複雑適応系として捉え、「空間生態学」という新しい学問を切り拓いた。

初期の有名な研究では、潮間帯群集(海の波打ち際の生物群集)の高い生物多様性の観察から、互いに競争排他関係にある種が共存するためには空間の広がりが必要であること、生物の多様性を維持する仕組みとして、回復可能な攪乱が必要であることを予測し、数理モデルをつくった。(このモデルを実証したペイン博士の実験では、岩礁生態系から貝の捕食者であるヒトデ(攪乱の原因)を除くと、繁殖力の強いムラサキガイだけが繁栄し、15種類いた生物が8種類に減った。ヒトデという攪乱によって生物の多様性が維持されていることが実証されたのである)このようなモデル解析が森林の多様性などにも応用できることを示した。

教授の数理モデルは、小さなスケールの結果を解析することにより、広域スケールの現象を理解するためにはどのような手立てが必要なのかを明らかにしたため、実際に多くの環境管理の場面に用いられている。教授は経済学者や環境科学者との共同研究を積極的に進め、具体的で実践的な環境管理方法を提案し、環境問題への有効な指針を与えた。

近年の大量生産、大量消費、大量廃棄は、生物多様性の急激な喪失を引き起こし、しかも回復困難な事態を招いている。レヴィン教授の著書『持続不可能性 』(1999)は、生物多様性が脆弱な基盤の上に成り立っていることを明確に示し、人類はそこからどれだけ多くの恩恵を受けているか、その恩恵を失わないために私たちは何をなすべきかを説いている。

環境問題がますます深刻化していく今後、レヴィン教授の生態学と環境科学への貢献は計り知れないものがある。

詳細は業績ページをご覧下さい。

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