2026年度 InaRISの申請受付がはじまりました!

稲盛財団は、5月20日、2026年度の稲盛科学研究機構(InaRIS: Inamori Research Institute for Science)フェローシップの申請受付を開始しました。

InaRISは、短期的に成果を求めるのではなく、好奇心の赴くまま存分に、壮大なビジョンと大きな可能性を秘めた研究に取り組んでもらおうと、2019年に設立されました。1人につき10年間継続・総額1億円の助成を行います。プログラム設立から7年目を迎える現在は、12名のフェローがそれぞれに新たな展望の可能性を追求する研究に取り組んでいます。

今年度の募集対象は非平衡科学の展開で、2名の採択を予定しています。募集要項や申請要件については、稲盛科学研究機構「InaRIS」のページ をご確認ください。また下記の募集対象の説明動画も併せてご覧ください。

 

非平衡科学の展開

非平衡科学は、流れや変化が本質となる現象を体系化する学問です。特に、物質科学の基盤のひとつである熱力学・統計力学によって体系化された平衡系の科学との対比を踏まえて、新しい基礎科学を構築することを目指しています。19世紀に確立した流体力学をその始まりとして、20世紀には多様で複雑な現象を表現する簡単な法則があることが明らかになりました。不規則な時系列を生み出す機構を与える「カオス」、および、自励振動やチューリングパタンなど非平衡条件下で自己組織化される「散逸構造」がその代表的な研究対象でした。21世紀では学際融合的な側面がさらに強まりました。小さな分子機械に対する熱力学の体系化を目指した「ゆらぐ熱力学」では、ゆらぎの定理を機軸にした新しい形式が発展し、エネルギー変換と情報のやりとりの制約が統一的に定式化されようとしています。また、鳥の群れの運動のようにアクティブな素子の集まり(アクティブマター)が示す協同現象は、生命の階層構造の理解を目指して精力的に研究されています。ミクロとマクロの関係をより広い視点で捉え、ネットワークの考え方を積極的に取り入れることにより、生態学や環境科学あるいは経済社会現象に関わるダイナミクスも研究対象になっています。伝統的な物質科学においても、冷却原子系や光駆動系などの実験制御技術の発展により、孤立量子系ダイナミクスにおける平衡化機構や非平衡開放系における新奇物性の発現機構が解明されようとしています。これらの発展は相互に関係しており、それぞれの研究対象にはっきりとした境界がないのが特徴です。また、研究をすすめる中で、幅広い非平衡現象の中から新しい研究対象のグループが形成されてきました。今後の非平衡科学の展開においても、これまでの発展を踏まえつつ、新しい研究対象が見いだされることが期待されます。情報科学、生命科学、地球科学、物質科学などの既存の分野にとらわれることなく非平衡を鍵にした学際融合研究が展開されるでしょう。そして、そこで生まれた新しい考え方や方法を深化させることで普遍的な学問体系の創出につながることが望まれます。これらの観点において卓越した研究提案を募集します。
研究の主要な狙いと具体例:
  • 非平衡がもたらす学際融合研究の展開
       例:動的生命現象に対する非平衡論の構築、異常気象や疫病伝搬のダイナミクスへの新しい着眼
  • 非平衡が関わる基礎科学の深化
       例:ミクロスケールにおける非平衡現象の開拓、物質科学と情報科学の統合
申請はこちら  

*受付は2025年7月31日17時まで
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