InaRISのフェローが委員らと議論
2年ぶりにアドバイザリー・ボード・ミーティングを対面開催

藤田氏と深見氏

談笑する2022年度InaRISフェロー、藤田大士氏(左)と深見俊輔氏(右)

 

「稲盛科学研究機構(InaRIS)フェローシップ」の運営委員やフェロー同士が研究内容について議論を交わす「アドバイザリー・ボード・ミーティング」が10月4日、稲盛財団(京都市下京区)にて開催されました。

InaRISは、短期的に成果を求めるのではなく、好奇心の赴くまま存分に、壮大なビジョンと大きな可能性を秘めた研究に取り組んでもらおうと、2019年に設立されました。助成金額は毎年1,000万円、10年間にわたり総額1億円を支援します。

今回のミーティングでは、2022年度(物質・材料)のInaRISフェロー、深見俊輔氏(東北大学教授)と藤田大士氏(京都大学准教授)、2021年度(生命・生物)のInaRISフェローの西増弘志氏(東京大学教授)と山口良文氏(北海道大学教授)が研究の概要と進捗状況についてプレゼンテーションを行い、続いて運営委員やフェロー同士での議論を行いました。

一人目の深見氏は、電子の電荷だけではなくスピンをも利用する(スピントロニクス)材料を応用した演算素子を開発し、それらを人工的に制御することで、従来のノイマン型コンピュータでは演算速度や消費電力の点から実現困難な、脳型コンピューティングや確率的コンピューティングを実現するという野心的な取り組みについて発表しました。

次に発表した藤田氏は、不安定で生体外ではすぐに機能を失ってしまうタンパク質を、一分子ずつカプセルで包み込み、生体環境外で活用可能にする革新的な試みについて話しました。さらには、これまでにないサイズや形状のカプセルを、ユニークな数学的アプローチに基づいて合成する可能性について言及しました。

三人目の西増氏は、ゲノム編集技術で一躍注目されるようになったCas9が含まれることで知られる、RNA依存性酵素の新規遺伝子探索と活用可能性について話しました。標的RNAの二か所を切断するCas7-11(キャス・セブンイレブン)の小型版Cas7-11Sの開発に関する最新の研究成果を発表しました。

最後に発表した山口氏は、哺乳類の冬眠メカニズム解明の鍵となる因子をさぐる研究を紹介しました。シリアンハムスターをモデル動物に使って見出した、冬眠時に特徴的な生理状態や遺伝子発現パターンの変化について発表しました。質疑の時間では、冬眠関連遺伝子の探索方法についての議論を行いました。

運営委員からは研究の方向性などについて忌憚のない意見が述べられ、またフェロー同士の学術的な意見交換も行われ、活発な議論に会場は終始熱い知的興奮に包まれていました。

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