稲盛財団が京都市交響楽団と協力し、多くの方々に音楽と出会う機会をつくるのが「INAMORI ミュージック・デイ」。その一環として、今年も京都市交響楽団のメンバーによるミニコンサートが、京都市京セラ美術館の本館 中央ホールで全3回にわたって開かれました。その第1回として、8月16日に行われた公演の模様を取材レポートとしてお届けします。
オーボエの藤本茉奈美、クラリネットの筒井祥夫、ファゴットの村中宏という名手が木管三重奏を組んだ。まずは20世紀に活躍したフランスの作曲家であるダリウス・ミヨーの《「コレット」による組曲》が演奏された。400曲を超える膨大な作品を残したことで知られるミヨーだが、この曲の実演に接する機会はなかなかない。この企画が始まった際、美術館内の会場選定にも関わった村中によると、「短い曲が連なってキャラクターが変わるところが、美術館で絵を一枚一枚見ていく様子に重なる」という理由から選曲したとのこと。
続いては趣向をガラリと変えて、三村総撤編曲によるメドレーが演奏された。『異邦人』(1979年)、『木綿のハンカチーフ』(1975年)、『ルビーの指環』(1981年)、『時の流れに身をまかせ』(1986年)と懐かしい曲が続くと聴衆の顔もほころんだ。
100人を超える多くの聴衆が集まった会場からの拍手に応えて、アンコールにモーツァルトの《ディヴェルティメント 変ロ長調 K. 439b, No. 4》から第5楽章が演奏された。同美術館で開かれている『浮世絵スーパークリエイター 歌川国芳展』に来たという女性は、「普段なかなか演奏会に行く機会がないので、やっぱり生はいいなと思いました」とにこやかに話した。
同美術館では『国芳展』にあわせて、『テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート』や、同美術館が誇る所蔵品を紹介する『コレクションルーム 夏期 特集「詩情の画家、塩川文麟と近代京都の日本画」』も開かれていた。まさに「美術と音楽、二つの芸術との出会い」を掲げる「INAMORI ミュージック・デイ 2026」。美術館を訪れた人が思いがけず生の音楽に足を止め、その響きに心を動かされる。こうした催しならではの豊かな出会いが生まれていた。
文:小味渕彦之(音楽評論家)