森 悠一郎 Yuichiro Mori

北海道大学 大学院法学研究科准教授※助成決定当時

2020稲盛研究助成人文・社会系

採択テーマ
個人としての尊重を中心とした差別の規範理論の法哲学的検討
キーワード
研究概要
本研究は、「『差別』とは何か?」「なぜ差別をしてはいけないのか?」という問題に対して、「個人としての尊重」という価値を根本に据えた理論構築がどこまで可能かについて、法哲学の立場から検討するものです。
本研究では差別の道徳的な不正さの究極的な根拠を、個人の自由・自律・尊厳の侵害によって説明する理論の擁護可能性を探求し、歴史的な不正の被害者集団への差別とそうでない集団への差別の不正性を原理的・統合的に説明しようと試みます。

ひとこと

この度は本研究に助成いただけたことに大変感謝しております。
現代社会における喫緊の課題に対し、既存の価値観にとらわれずに新たな視点を提供できればと思っています。

研究成果の概要

本研究は、「『差別』とは何か?」「なぜ差別をしてはいけないのか?」という問題に対して、「個人としての尊重」という価値を根本に据えた理論構築がどこまで可能かについて、法哲学の立場から検討するものです。

本研究では差別の道徳的な不正さの究極的な根拠を個人が自らの(人種・性別などの)属性を考慮することを強いられない自由の侵害に求める立場(熟慮的自由説)と、それを個人の人格的尊厳の蹂躙に求める立場(尊重説)の理論内容を明らかにして、その長短を比較検討しました。具体的にはそれらの立場から間接差別や構造的差別の問題、歴史的不正の被害者として認知されていない集団への差別の問題にどう対応することができるかについて考察しました。

熟慮的自由説は、特定の集団に属する個人の自由が行使困難になるという理由に訴えることで、間接差別などの差別性を直接差別と統一的に説明できるという長所がある一方で、尊重説からはそうした間接差別の不正性は差別固有の不正性以外によって説明されるべきであるという応答が可能であることが結論づけられました。歴史的不正の被害者とされていない集団については、白人や男性などの有利集団とされてきた集団に加え、若者や高齢者といった年齢集団への差別の不正性についても検討しました。結論として、いずれの立場からもそうした集団に対する差別の不正性を一定程度的確に説明し得ることが明らかになりました。


森 悠一郎(2022)「第6章 関係的平等主義と相談支援」、菊池馨実編『相談支援の法的構造 ― 「地域共生社会」構想の理論分析』(信山社)、117項から135項。


2024/07/17 追記: 2023年3S交流会での発表内容「ウクライナ出国禁止令をどう考えるか?――法哲学における差別の規範理論の立場から」 に関する論文も刊行されました。


Yuichiro Mori (2024). “On the Moral Wrongness of a Male-Only Ban on Leaving One’s Homeland,” Philosophy of Law and General Theory of Law, No. 1 (2023), pp. 101-120. http://phtl.nlu.edu.ua/article/view/307642


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