開出 雄介 Yusuke Kaide

北海道大学大学院公共政策学連携研究部准教授※助成決定当時

2024稲盛研究助成人文・社会系

採択テーマ
気候変動に対処するための国際法の構造分析——約束モデルと公益モデル——
キーワード
研究概要
私の専門分野は国際法学です。私はこれまで、国際法上国家が他国に対してする約束というものが、国際裁判所の判例や、国家が国際法について示す認識において頻繁に登場するものであるのにも拘らず、これまでの国際法学において見逃されており、こうした重要な要素が踏まえられていない結果、国際法学の体系化が十分に進んでいないのではないか、との問題意識の下、研究を進めてきています。こうした問題意識は、国際法の違反があった場合の法的帰結を全て規律する、国家責任法という国際法の一分野に関する突っ込んだ研究を通じて得られたものですが、今回はこうした研究を踏まえて、気候変動に関する京都議定書とパリ協定を、その法的構造という観点から分析しようとするものです。

助成を受けて

社会科学分野に助成をしてくださることに深く感謝しています。助成を得て研究を進展させ、海外にも積極的に発信して行きたいです。

研究成果の概要

気候変動枠組条約における議定書の一つである京都議定書は、先進国(附属書Ⅰ国)について、数値化された二酸化炭素削減目標を、国ごとに、一定の期間を区切って、設定しており、そして、遵守委員会に、促進部に加えて強制部という部門を設け、第一約束期間(2008-2012)に数値目標を達成できなかった場合、超過分の1.3倍を、第二約束期間(2013-2020)の排出枠から差し引くこととされている。さらに、強制部の委員は法律関係者であることが要求されている。申請者が条約交渉過程を分析したところ、そこにおいて、米国が、京都議定書は二辺的な約束の束であり、それゆえに、他のすべての国は数値目標の違反について条約上責任追及できる(通常の責任追及以上に、1.3倍という懲罰的な責任追及も行うことができる)、そしてそれゆえに、強制部の委員は法律関係者であり、強制部における手続は対決的で、準司法的なものでなければならないと主張していた。京都議定書はこうした米国の主張を受け入れるものとして成立した可能性がある。


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