学校はいかなる社会的機能を果たしているのか。わたしはこの問いを歴史的視点から研究しています。これまでわたしは、学校で教師が生徒に与える罰が、人間の社会化や社会秩序の形成にどのような機能を果たしているのかを問うてきました。学校で教師が生徒に罰を与えることは、現在では子どもの抑圧や個性の否定といったようにネガティブに解釈されますが、歴史的にみると、学校での罰には子どもが自他の役割を理解し、他者と共に行動することの大切さを伝える機能があることがわかってきました。
これからの研究では、学校と人びとの生活設計の結びつきを問い直したいと考えています。近代学校は、能力や努力という基準で人びとを選抜し、社会へ配分する機能をもって成立したとされますが、一方で、その選抜配分は、現実には人びとの元々の地位を再生産してきたに過ぎないという見方もあります。とはいえ、これまでの研究には、人びとの視点に立ち、彼らが自らの将来設計をする過程を十分に捉えてきたとは言いがたい面があります。学校に残存する児童の個票データを分析することで、人びとの生活設計に対する学校の機能を再考したいと考えています。
人文・社会系領域