水谷 智彦 Tomohiko Mizutani

山形大学地域教育文化学部講師※助成決定当時

2025稲盛研究助成人文・社会系

採択テーマ
戦前期における学校の選抜・配分機能をめぐる考察―大正期・昭和初期の「個性調査簿」に着目して―
キーワード
研究概要
本研究では、戦前期の学校が、人の生活設計を変える力を持っていたのかを問い直します。戦前の人びとの生活設計は、基本的に生まれた土地や家柄によって拘束されており、進学のために生まれた土地を出たり、受け継がれる家業とは異なる近代的職業に就くことは、高い階層の人に限られたことでした。このように戦前には土地に根付いておこなわれた進学・就職行動を、同時期の学校はどの程度変えることができたのか。大正・昭和初期に小学校の教師たちが作成した「個性調査簿」という児童の個票データを分析し、解明したいと思います。

助成を受けて

学校はいかなる社会的機能を果たしているのか。わたしはこの問いを歴史的視点から研究しています。これまでわたしは、学校で教師が生徒に与える罰が、人間の社会化や社会秩序の形成にどのような機能を果たしているのかを問うてきました。学校で教師が生徒に罰を与えることは、現在では子どもの抑圧や個性の否定といったようにネガティブに解釈されますが、歴史的にみると、学校での罰には子どもが自他の役割を理解し、他者と共に行動することの大切さを伝える機能があることがわかってきました。
これからの研究では、学校と人びとの生活設計の結びつきを問い直したいと考えています。近代学校は、能力や努力という基準で人びとを選抜し、社会へ配分する機能をもって成立したとされますが、一方で、その選抜配分は、現実には人びとの元々の地位を再生産してきたに過ぎないという見方もあります。とはいえ、これまでの研究には、人びとの視点に立ち、彼らが自らの将来設計をする過程を十分に捉えてきたとは言いがたい面があります。学校に残存する児童の個票データを分析することで、人びとの生活設計に対する学校の機能を再考したいと考えています。

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