向 静静 Jingjing Xiang

立命館大学立命館アジア・日本研究機構助教※助成決定当時

2024稲盛研究助成人文・社会系

採択テーマ
20世紀前半における日本漢方医学書の中国への影響:東アジアの思想的交流の解明
キーワード
研究概要
本研究は、日中における医学の交流が、中国の古典医書から日本への影響という一方的な関係にとどまらず、日本から中国への影響があったことを実証的に論じる。これまで、近世東アジアにおける『傷寒論』の注釈・流布によって発生した思想の変容について研究を進めてきたが、本研究では20世紀前半における日本漢方医学書が近代中国に与えた影響を解明する。具体的には、近世日本で蓄積されてきた中国古典医書関係書が近代中国の医学・思想界に与えた影響を、これまで使われていない史料を用いて解明する。

助成を受けて

日本と中国の東洋医学(漢方医学・中医学)に関する情報交流とその相互影響を明らかにする。これによって、医書研究という角度から、日中文化交流史の新側面に光が当てられ、両国のよりポジティブな関係構築にも貢献したい。

研究成果の概要

東アジアにおける医学知の交流は、中国から日本への一方向的な伝播にとどまらず、日本から中国への知的環流も含まれていた。明治期以降、多くの中国人学者や医師が日本の漢方医学書を中国に持ち帰り、近現代中国医学に大きな影響を与えた。楊守敬は1880年に来日し、幕府医官であった多紀家の医学書を収集し、それらは1884年に中国で『聿修堂医学叢書』として出版された。また、丁福保は1911年に『医界之鉄椎』を出版し、陳存仁は1936年に『皇漢医学叢書』を編集・刊行した。これらの日本の漢方医学書は、陸渊雷をはじめとする中国の医学者たちに影響を与え、現代中国医学の形成に大きく寄与した。


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