日本と中国の東洋医学(漢方医学・中医学)に関する情報交流とその相互影響を明らかにする。これによって、医書研究という角度から、日中文化交流史の新側面に光が当てられ、両国のよりポジティブな関係構築にも貢献したい。
東アジアにおける医学知の交流は、中国から日本への一方向的な伝播にとどまらず、日本から中国への知的環流も含まれていた。明治期以降、多くの中国人学者や医師が日本の漢方医学書を中国に持ち帰り、近現代中国医学に大きな影響を与えた。楊守敬は1880年に来日し、幕府医官であった多紀家の医学書を収集し、それらは1884年に中国で『聿修堂医学叢書』として出版された。また、丁福保は1911年に『医界之鉄椎』を出版し、陳存仁は1936年に『皇漢医学叢書』を編集・刊行した。これらの日本の漢方医学書は、陸渊雷をはじめとする中国の医学者たちに影響を与え、現代中国医学の形成に大きく寄与した。
人文・社会系領域