土田 千愛 Chiaki Tsuchida

東京大学大学院総合文化研究科特任助教※助成決定当時

2023稲盛研究助成人文・社会系

採択テーマ
一時的保護の再考:ウクライナ避難民の保護を事例に
キーワード
研究概要
これまで難民研究は、「難民の地位に関する条約」に基づく、伝統的な難民保護の枠組みの適用範囲が限定的であることを指摘してきました。難民の発生要因が多様化する現代社会では、新たな難民保護の在り方が求められています。
そこで、本研究では、G7 加盟各国・地域のウクライナ避難民に対する一時的保護政策に着目します。そして、「ウクライナ避難民に対する一時的保護は、国際的な難民保護の枠組みにどのような示唆を与えたか」を検討し、現代社会における難民レジームとして、一時的保護の役割を考察します。

助成を受けて

この度は、2023年度稲盛研究助成に採択していただきまして、誠にありがとうございます。国際的・国内的に、難民政策が転換期にある中、私は、本研究を通して、現代における難民保護の在り方を検討し、学術的に貢献したいと考えています。どうかよろしくお願いいたします。

研究成果の概要

2022年2月24日のロシアによるウクライナ軍事侵攻以降、G7加盟国は、ウクライナ避難民の受け入れを進めた。このとき、日本は、他国のように「一時的保護」の枠組みで一時的に対応するのではなく、新たに「補完的保護対象者の認定制度」を設置し、羈束的に在留資格を認めるかたちで、ウクライナ避難民を受け入れようとした。本研究は、この動きに着目した。


本研究では、日本のウクライナ避難民の受け入れと「補完的保護対象者の認定制度」の導入について、国会、出入国管理政策懇談会、難民認定制度に関する専門部会などの会議録をもとに検討することを試みた。その結果、日本における「補完的保護対象者の認定制度」の導入は、迫害を受けるおそれのある地域への送還を禁止する「ノン・ルフルマン原則」の適用範囲の拡大と「人道配慮による在留許可」の発展という、国内の難民保護の歴史の延長線上に位置付けられることを明らかにした。また、ウクライナ避難民の受け入れは、日本が補完的保護に関する国際人権規範を受容することを助長したと言える。


土田千愛(2024)「2023年入管法改正における補完的保護対象者の認定制度に関する一考察」『移民政策研究』(16):20–34


土田千愛(2024)『日本の難民保護―出入国管理政策の戦後史』慶應義塾大学出版会


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