後藤 亜希 Aki Goto

宇宙航空研究開発機構 研究開発部門研究開発員※助成決定当時

2019稲盛研究助成理工系

採択テーマ
高分子材料表面物性の原子状酸素ビームによる新規制御法開発
キーワード
研究概要
地球低軌道に存在する残留大気の一種である原子状酸素 (Atomic Oxygen: AO) は、人工衛星を構成する熱制御フィルムなどの高分子材料と衝突することで、材料表面を酸化、浸食してしまいます。AOによる材料表面の浸食は、材料の熱光学特性などの機能性を低下させてしまうため、低軌道衛星に適用する宇宙用材料の耐AO性評価は必要不可欠となっています。宇宙用材料の耐 AO 性を評価するための地上 AO 照射試験の結果から、AO と高分子材料の反応により、材料表面にナノ及びマイクロオーダーの微細な突起構造が形成されることがわかっています。今回私は、AO の高分子材料表面への微視的突起構造形成能に注目しました。AO と高分子材料の反応は、材料表面の「浸食劣化」としてではなく、「積極的な表面改質」と捉えられます。本助成課題では、AO 照射による高分子材料表面改質技術の開発と応用への道を切り開くことを目的とし、高分子材料への AO 照射による微視的突起構造形成メカニズムの解明を目指します。突起構造の形状を決定づける AO 及び材料のパラメータを抽出することで、突起構造形成メカニズムを考察し、高分子材料表面の微細形状を AO ビームにて制御する方法を明らかにしたいです。

助成を受けて

この度は、多くの優れた研究課題を支えてこられた研究稲盛財団研究助成に採択いただき、大変感謝しております。本助成課題において、宇宙材料評価のために開発された AO ビームを、新しい表面改質技術として世の中に提案したく考えています。そして、科学技術の発展に加え、人々の心の豊かさに貢献できるような研究者になれるよう、「利他の精神」を持って努力してまいりたいと思います。また、盛和スカラーズソサエティの皆様と、研究開発に関する交流・議論ができますと幸いです。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

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