三石 郁之 Ikuyuki Mitsuishi

名古屋大学 大学院理学研究科助教※助成決定当時

2018稲盛研究助成理工系

採択テーマ
世界初高感度X線偏光観測衛星IXPE搭載用受動型熱制御素子の開発
キーワード
研究概要
私たちは可視光で彩られた世界を網膜というセンサーを通し、みている。
一方で、携帯電話やレントゲンなどで使われている電波や X 線など、
私たちが直接眼でみることができない電磁波が存在することも知っている。


宇宙にもまた様々な種類の電磁波が飛び交っており、私たちは特に X 線に着目し研究を行っている。
X 線は可視光のおよそ 1000 倍程度の高いエネルギーを持っており、
ブラックホールや超新星残骸、銀河団などの高エネルギー天体の観測に適している。
しかしながら宇宙から飛来する X 線は地球大気に吸収されるため地上には届かない。

ゆえに気球・ロケット・人工衛星などの飛翔体を利用し観測する。


私たちは飛翔体搭載用の熱制御素子の開発を進めている。
宇宙空間の熱環境は過酷であり、熱制御なしでは搭載機器性能の劣化、ひいては故障を引き起こしかねない。
熱制御素子の実体はおよそミクロン厚のポリイミドフィルムに、支持材としてのステンレスメッシュとアルミフレームであり、
ポリイミドには適切な熱光学特性を持たせるために数十ナノメートル厚のアルミ薄膜が成膜されている。
私たちはこれまで複数の飛翔体搭載実績を有し、
現在は 2021 年打ち上げ予定の NASA 主導世界初高感度 X 線偏光観測衛星 IXPE への搭載品の開発を進めている。
本素子開発を完遂させ、プロジェクトに貢献することで、X線偏光天体物理学を切り拓いていきたい。

助成を受けて

このような名誉ある研究助成を頂けましたこと、改めて開発チーム一同感謝申し上げたいと思います。
本助成の採択は、IXPE への搭載が決まった直後であり、
設計の最適化など一部予算のめどがたっていない苦しい中での吉報であったため、
とてもありがたく身が引き締まる思いであったことを良く覚えております。
本助成を通し進められた研究は、2021 年に結実の年を迎えます。
皆様の好奇心を大いに刺激するような成果を創出できるよう、努めていきたいと思っております。

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