InaRIS フェロー (2023-)

亀井 靖高 Yasutaka Kamei

九州大学大学院システム情報科学研究院准教授※助成決定当時

2023InaRIS理工系

採択テーマ
機械と人のインタラクションによるソフトウェア開発様式の創出
キーワード
研究概要
オープンソースの普及に伴って、ソースコードを含めたソフトウェア開発に関連するデータが広く参照可能である。そのデータは、まさにソフトウェア開発の過程そのものであり、ときには開発プロジェクトの試行錯誤の様子も記録している。本研究では、データ駆動アプローチの完全自動化ではなく、機械(開発者のノウハウを学習したもの)とソフトウェア開発者が互いに学習し支え合う枠組みを創出する。


選考理由

情報システムは、交通・電力・金融などの社会基盤として現代社会で広く活用されており、さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)、IoTやAIを高度に利用するSociety 5.0の実現など、その用途を拡大・変革し続けている。既存システムを保守・運用しつつ、新たなサービス、ビジネスモデルを創出し移行・展開することが産業界の課題であり、それを実現するためのソフトウェア開発は、専門性の高い高度ソフトウェア開発者のみならず、さまざまな業種で活躍する幅広い市民に求められるスキルともなりつつある。さらには、育児や介護との両立など多様な働き方を選択できる社会の実現が広く社会で求められており、ソフトウェア開発者の働き方改革も課題となっている。


亀井氏は、これらの問題を、ソフトウェア開発の効率化・自動化のみならず、ソフトウェア開発者の多様な働き方を実現するための開発スタイルの改革、ソフトウェア開発者のwell-beingの実現にまで踏み込んで解決しようとしている。目標とする新たなソフトウェア開発のスタイル創出では、ソフトウェア開発者個人、開発チーム、開発コミュニティという三つの観点で研究に取り組む。研究の核となるアイデアはインタラクションである。ソフトウェア開発者と機械(開発支援ツール)が会話し学習することで既存ツールの限界を超える開発支援を目指し、開発者間のコミュニケーションを支援することで開発効率の向上と開発者のwell-beingの実現の両立を目指している。これらは、さまざまなデータや知識・情報を利活用し知的生産活動につなげるにはどうすればよいかという情報学の本質的な問いにも応えようとする研究である。


亀井氏はこれまで、ソフトウェアの不具合であるバグの自動修正技術などの分野で大きな成果を挙げている。特に、開発者がソースコードを変更した直後にバグの混入可能性を予測するジャストインタイム検出手法は、ソフトウェアの開発効率を飛躍的に向上させる手法として高く評価されている。近年は、ソフトウェア開発チームのための新しい開発スタイルやオープンソースソフトウェア(OSS)の開発者コミュニティへの支援など、ソフトウェア開発支援の観点を拡大した研究を展開しているが、研究の展開が開発チームや開発コミュニティの抱えるさまざまな課題の気付きに繋がり、新たなソフトウェア開発のスタイル創出に挑戦する本研究の着想に至っている。


亀井氏は、国際的に活躍するソフトウェア工学研究を牽引する若手研究者であり、InaRISフェローシップの支援により、さらに飛躍し「水平線の彼方の情報学」を切り拓くために貢献することが期待される。




助成を受けて

InaRISでは、10年という長期間にわたり,支援をしていただけます。他の研究助成プログラムでは、ついつい避けてしまうようなワクワクするけど挑戦的なテーマにじっくり取り組みたいと思い、応募しました。今後集まるInaRISフェローの方々とも議論を深め、ソフトウェア工学における機械と人のインタラクション実現に向けた研究をしていきたいと考えております。

フェロー紹介動画


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