近年の生物学では網羅的実験によって膨大なデータが生成されているが、そこから生物学的原理を見出すことを可能にするデータ解析手法が不足している。種ごとの内在的データ構造および種間の相対関係を明らかにすることで生物学的知見を深めていくが、これは数学的にはデータが定める空間や写像の不変量を抽出することに対応する。本研究では「What makes us human?」という生物学的な問いに対して、種差表出原理を解明する数学的データ解析手法の開発に取り組む。
本申請で平岡氏は、生命科学の基本問題「What makes us human?」(種差表出原理)を実験生物科学者と共に多様な数学手法を用いて解決しようという挑戦的かつ壮大な課題に取り組もうとしている。生命科学においては、ヒトとマウスが多くの遺伝子が一致しているにも関わらず、動物実験の結果をそのままヒトへ適用する際に大きな困難を伴うことが多く、種差問題と呼ばれる。これは種差が遺伝子の集合として見た近さではなく、その空間構造やダイナミクスにおいて顕著に現れることによる。この点から種差問題はまさに数学が深く関与できる可能性のある問題となる。これまでこのような観点から種差問題に取り組んだ数学者は皆無であり、平岡氏は、この種差問題に初めて本格的に挑戦しようとする数学者であるといえよう。