松本 拓也 Takuya Matsumoto

大阪府立大学 大学院工学研究科助教※助成決定当時

2020稲盛研究助成生物・生命系

採択テーマ
有機溶媒に耐性を有するPET分解酵素の開発
キーワード
研究概要
2019年の大阪G20サミットでも取り上げられたように廃プラスチックの処理は現在、世界的な問題となっています。本研究では、ポリエチレンテレフタレート(PET)を分解可能なPET分解酵素を用いた処理法に着目しています。PET分解酵素はPETを微生物が代謝できるモノマーに分解することが可能ですが、野生型の酵素では分解活性や溶媒安定性が十分ではありません。そこで、進化分子工学的手法を用いてPET分解酵素の溶媒安定性を向上させることで効率的なPET分解を可能にし、廃プラスチック問題の解決に貢献します。

ひとこと

この度は、稲盛財団研究助成の対象に選出頂きまして誠に有難うございます。本研究課題に取り組むことで廃プラスチック問題の解決へ貢献できるよう努めていきたいと思います。

研究成果の概要

本研究では、酵素を用いたプラスチック分解の中でも、特にポリエチレンテレフタレート(PET)を分解可能なPET分解酵素による処理法に着目しました。大阪府堺市のリサイクル工場から単離されたIdeonella sakaiensisはPETを炭素源として生育できる微生物として注目されており、I. sakaiensisに由来する酵素PETaseあるいはMHETaseに関して、多様な基礎研究が行われています。ここで、酵素反応は一般的に水の中で行われますが、PETはそもそも水に全く溶けません。このことが、PETの酵素分解における大きな問題となっています。そこで、PETが溶けやすい、あるいは膨潤するような有機溶媒中で反応を行うことが可能になれば、PETを効率よく酵素分解可能になるのではないかと考えました。よって本研究では、有機溶媒中でも分解反応を高効率に触媒可能なPET分解酵素および分解系の開発を目的としました。実際に、大腸菌を宿主としてI. sakaiensis由来のPETase(およびMHETase)を発現・精製し、種々の有機溶媒中におけるPET分解反応について検討したところ、PETaseによるPET分解が促進されたことが確認できました。このことから酵素の有機溶媒耐性を改善していくことで、より効率的なPET分解が可能になると考えられます。


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