木全 祐資 Yusuke Kimata

東北大学 大学院生命科学研究科助教※助成決定当時

2022稲盛研究助成生物・生命系

採択テーマ
コケ植物ゼニゴケを用いて植物の体軸形成機構の進化にせまる
キーワード
研究概要
植物の体軸は受精卵の非対称分裂によって方向づけられますが、この仕組みが進化の過程でどのように獲得されたのかはわかっていません。本研究では、コケ植物ゼニゴケを用いて、独自のイメージング技術を駆使することで、植物の形づくりの進化にせまります。

助成を受けて

このたび全く新しい研究テーマに取り組む機会を与えていただき感謝いたします。植物の形づくりの進化という発生生物学の重要な命題の理解に貢献できるよう努力してまいります。

研究成果の概要

本研究では、細胞膜に特異的に結合する蛍光色素FM4-64を用いて、花や種子の奥深くに存在する植物の生殖細胞を生きた状態のまま高解像度で可視化する簡便な染色・観察法を確立した。シロイヌナズナの若い種子をFM4-64で染色し顕微鏡下で培養することで、卵細胞、受精卵および初期胚の細胞輪郭や細胞分裂の過程を深部まで連続的にライブイメージングできることを示した。さらに、本手法を2光子励起顕微鏡などの深部観察系と組み合わせることで、受精卵が胚発生を開始するタイミングや初期胚の分裂パターンを時系列的かつ定量的に解析できる汎用的ツールであることを明らかにした。本法は、被子植物に加え、コケ植物ゼニゴケやシダ植物リチャードミズワラビなど多様な植物種の生殖組織にも適用可能であり、遺伝子導入を必要としないことから、遺伝子組換え技術が確立していない非モデル植物種にも展開可能な手法である。本研究で確立した可視化・ライブイメージング法は、多様な突然変異体や阻害剤処理との組み合わせによる攪乱実験を通じて、植物の受精過程および胚発生の分子機構解明を加速するとともに、農学的・進化学的に重要な植物の生殖戦略や交配技術の高度化に貢献する基盤技術である。


Yuga Hanaki,et al. (2025) A simple and versatile plasma membrane staining method for visualizing living cell morphology in reproductive tissues across diverse plant species Plant Methods 21 (1) doi:10.1186/s13007-025-01465-7


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