石割 文崇 Fumitaka Ishiwari

大阪大学大学院工学研究科講師※助成決定当時

2023稲盛研究助成理工系

採択テーマ
デザイン型二面性分子によるペロブスカイト太陽電池の表面パッシベーション
研究概要
近年、次世代太陽電池として目されているペロブスカイト(PVK)太陽電池の高性能化の指針の一つとして、PVK粒子の表面/界面の構造欠陥を、有機分子で保護する表面パッシベーションという手法が提案されている。本研究では、パッシベーションの対象が、「PVKの表面という非対称な二次元場」であることに着目し、分子構造に「非対称な二面性構造」という新たな構造概念を導入した新規「二面性パッシベーション分子」を設計・合成・評価し、PVK太陽電池の変換効率および耐久性の向上を目指す。

助成を受けて

構造的にも面白い機能性分子を生み出すのが夢です!頑張ります!

研究成果の概要

多環芳香族炭化水素やラダーポリマーなどのは、「面」という特異な構造要素を有する。通常これら物質は、この面に対して対称な構造を有しているケースが多い。これらのラダー型物質の面外方向の対称性を制御し、意図的に非対称化した物質系、すなわち二面性分子を開発すれば、その非対称性に基づく物性・機能発現が期待できる。例えば、二面性分子は固体表面に向きを揃えて吸着することで、物質の表面・界面での物性・機能制御に利用できる可能性がある。また、母骨格とするラダー型分子の構造対称性によっては、この面外方向の異方性に基づき、することが多く、円偏光発光(CPL)やCISS(Chirality-Induced Spin Selectivity)など、近年注目されているキラル物性の発現も期待できる。このような思想の下、最近我々は、インデノフルオレン、インンダセノジチオフェン、トルキセン類などの、sp3炭素原子により架橋されたラダー型分子を二面化した、キラルな二面性分子モチーフの開発と、それを用いた応用研究や機能開拓に取り組んできた。これまでに、二面性ホール輸送材料や二面性三脚型分子を用いたペロブスカイトの表面パッシベーション、二面性トルキセンによる高い非対称性因子のCPL特性発現と機構解明やデバイス応用などの研究を展開している。また、導電性とキラリティーを併せ持つ二面性物質の開発を目的とし、二面性インダセノジチオフェン(IDT)を用い、高い電荷輸送性能を有するIDTとベンゾチアジアゾールとのドナーアクセプター型π共役ポリマーをキラル化した高分子合成し、そのスピンコート薄膜のCISS特性を、スピン偏極導電性AFMにより評価したところ、70%程度の優れたスピン偏極率を示すことを報告した。最近では、カルボキシメチル基を表面吸着性置換基として三つ有するトルキセン類がAg/Au(111)表面に高規則的に吸着可能な、ホモキラル分子三脚として機能することも見出した。



N. Minoi, *F. Ishiwari et al. (2024) Evolving bifacial molecule strategy for surface passivation of lead halide perovskite solar cells Sustainable Energy Fuels 8, 4453–4460 DOI:10.1039/D4SE01096E


S. Li, *F. Ishiwari et al. (2024) Chiral bifacial indacenodithiophene-based π-conjugated polymers with chirality-induced spin selectivity Chem. Commun. 60, 10870–10873 DOI: 10.1039/D4CC03292F


*F. Ishiwari, T. Omine et al. (2025) Homochiral Carboxylate-Anchored Truxene Tripods: Design, Synthesis, and Monolayer Formation on Ag(111) Chem. Eur. J. 31 DOI:10.1002/chem.202404750


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