細川智永 Tomohisa Hosokawa

名古屋大学大学院理学研究科講師※助成決定当時

2023稲盛研究助成生物・生命系

採択テーマ
液-液相分離の制御によるパーキンソン病の進行抑制
キーワード
研究概要
パーキンソン病患者の神経細胞内ではα-Synucleinと呼ばれるタンパク質が細胞毒性のある凝集体を形成しており、この凝集を抑制・破壊することが進行抑制に重要となる。近年、液-液相分離と呼ばれる物理現象によりα-Synucleinが細胞内で可逆的な液相の構造体である「凝縮体」を形成し凝集体へ相転移していることが分かってきた。そこで本研究では、パーキンソン病の進行抑制の戦略の発見を目指して、凝縮体の離散、相転移の抑制、相転移の伝播の抑制などを実現する因子を開発していく。

助成を受けて

タンパク質が自律的に集合し秩序だった構造と機能を獲得していく相分離という現象の神秘に魅せられ、日々驚きながら研究をしております。

研究成果の概要

シナプスにおける液ー液相分離の操作を目指し、コンピューテーショナルモデルの確立、共凝縮因子の網羅的同定、シナプスタンパク質の光遺伝学的操作のツール開発に取り組んだ。


コンピューテーショナルモデルの確立では、相分離および相内相の形成には結合の価数のほかにも構造のフレキシビリティが生み出す表面張力の変化が重要であることを見出した。


共凝縮因子の網羅的同定では相分離ドライバーと共凝縮する可能性の高いシナプス前終末の因子を複数同定できた。


光遺伝学ツールでは、光分解タンパク質を用いて結合価数を減少させる試みを通じて、シナプスの縮小を誘導した。このことは、シナプスという微小環境において相分離を抑制できる可能性を示唆している。


Vikas Pandey, Tomohisa Hosokawa et al. (2025) Multiphasic protein condensation governed by shape and valency Cell Reports 44 (4) doi:10.1016/j.celrep.2025.115504


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